先月末に新しく移り住んだ、傘の美しい街のとある裏路地に、よく当たる占い師がいる、と噂を聞いた。僕は市役所で手続きやらご近所さんへの挨拶やらで忙しい、と理由をつけてあの扉を開けずにいた。 しかし、思えば僕は占いと言えば雑誌の巻末にあるやつか朝の情報番組で「今週の6位は…蟹座です!」に聞き飽きる程度で、人にみてもらったことはなかった。聞けばお代は何でもいい、宣伝でもいいらしい。この街のボスも「あそこは良いぜ」と勧めて下さったので、コーヒー片手に仕事を終えてから、あの路地へ向かった。 ネオンがはびこる通りを抜け、また1本奥に入る。 路地に面した扉を引くと、地下に延びる細い階段があった。
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